市野耕
釉薬と造形が織りなす景色を愉しむうつわ
日本六古窯のひとつ丹波立杭焼の里で有名な兵庫県丹波篠山市にて、同じく陶芸家でいらっしゃる奥様の石井桃子さんとともに工房を構える市野耕さん。
生まれも育ちも丹波篠山市の市野さんは、ご実家も丹波焼の窯元。
日常の中で当たり前に使っているうつわが、祖父や父、他の丹波窯元、知り合いが制作したものという環境。
小学校では、毎年うつわを作り、裏山にある登り窯で焼く授業もあったとおっしゃいます。
当時は、夏休みに祖父の家にお泊まりに行った際にたまに作るくらいで、陶芸家になろうとは思ってはいなかったそうですが、高校卒業前に進路を考えた時、なんとなく訓練校に行ってみようと、京都府立陶工高等技術専門校に入学。
学校で、土やいろんな焼き物に触れ合う中で、どんどん焼き物にはまっていったとおっしゃいます。
卒業後は、弟子入りも考えられたそうですが、京都の陶芸作家の元で働く中で、自分の作りたいうつわを作りたいという気持ちが膨らんでいき、2016年に愛媛県松山市にて独立。
2021年からは、奥様とともに地元丹波篠山市に工房を移転。
各地のイベントや個展にも出展し、2025年には日本伝統工芸近畿展に入選されていらっしゃいます。
市野さんの作品の魅力は、釉薬と造形が織りなすうつわが纏う景色。
それは、焼成によって変化した釉薬が見せる、素地の色味との重なりであったり、釉溜まり、ふんわりと入った貫入。
小さい頃から土に触れてきた市野さんが作り出す洗練された造形。
それらが合わさり出来上がります。
特別な装飾や絵付けではなく、釉薬と造形でつくるうつわの表情は、まさに「景色を愉しむ」という言葉がしっくり。
その景色は、盛り付けるものや、また、使っていくうちにも風合いが変わっていき、それらを愛でる愉しみも味わうことができます。
その姿にどんどんと愛着が湧いてきます。
伝統的な陶芸技法と土物ならではの素朴な温かさと、市野さんならではの釉薬と造形のレトロモダン。
洋にも和にも。食卓に馴染んでいく市野さんのうつわの世界を是非お愉しみいただけたらと思います。
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