堀江遼子
触れて心を通わせるうつわ
東北芸術工科大学で陶芸を学び、卒業後は愛知県常滑市を拠点に制作。
各地のイベントへの出展を重ねたのち、2016年に故郷の鶴岡市へ戻り、日々制作を続けていらっしゃる堀江遼子さん。
堀江さんが作家を目指すきっかけとなったのは、学生時代のこと。
ご友人の「いつも側にいてくれる友人が欲しい」という言葉を受けて、石粉粘土で、手のひらほどの小さなキノコのようないきものをつくられます。
ご友人がとても喜んでくれたことが、堀江さんの心に深く残ります。
以来、堀江さんが作品に込めているのは、「日々の暮らしの中で、そっと心に寄り添ってくれる小さな相棒を届けたい」という想い。
その想いから生まれた存在が、「ponpoco」です。
「ponpoco」という名前は、古くから姿かたちを変えて人々を驚かせてきた、日本では親しみ深いいきもの「ぽんぽこだぬき」から名付けられました。
ポンっ、ポコポコっと、いくつも楽しげに増えていくような様子と、口にするだけで少し気持ちが弾むような響きで、親しみを持って愛してもらえたらという願いも込められています。
淡い白やグレー、わずかに青や緑を含んだやわらかな色。
丸みや揺らぎを残したひとつひとつ異なる姿に、小さな目と鼻、そして、きゅっと結ばれた口元。
こちらをじっと見つめるような表情は、無邪気にも、少し心細げにも、どこか遠くを見ているようにも映ります。
思わず撫でたくなったり、少し話しかけたくなったりするような、触れて心を通わせることのできる、存在の愛おしさ。
陶のいきものとして生まれた「ponpoco」は、「もっと人の手に触れ、愛でてもらうためには、どのようなかたちがよいのだろう」と考えるなかで、暮らしのさまざまな場面で触れ合うことのできる、うつわの姿へと変わっていきます。
堀江さんが日々の散歩のなかで出会う、草花、生きもの、季節の移ろい。
ふと心に触れたものを心の奥へそっとしまい、記憶のなかに残った感触や色、気配をすくい上げるように、ひとつひとつの作品へと映していくという堀江さん。
そうして生まれた作品は、手のひらに乗せて眺め、すべすべとした肌に触れていると、少しずつこちらの体温が移り、まるで小さないきものが温かくなっていくよう。
なめらかな白の素地に重なる釉薬のにじみや溶け、垂れ、そして、つくり手の指の跡。
そこには、笑顔や泣き顔、受け取る人によっては少し不気味にも、時には怖くも感じられるような表情が浮かびます。
つくり手である堀江さんの思惑を超えたところで生まれる色彩や質感の複雑さは、曖昧さを抱える私たちの、その時々の心模様を映してくれるよう。
そっと心をほどき、自然な状態へと戻してくれます。
うれしい日にも。
少し心細い日にも。
何も話したくない日にも。
ただそこにいて、一緒に暮らしてくれる存在。
ponpocoは、こちらを励ましたり、答えを教えてくれたりするわけではありません。
けれど、ふと目が合い、そっと手を伸ばしたとき、その小さな存在に心がやわらぐ瞬間があります。
たくさん触れ、見つめるうちに、いつしか愛着が芽生えていく、堀江さんの「ponpoco」。
あなたの手のひらにも、かけがえのない小さな相棒との出会いが訪れますように。
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