菊地大護
それらが存在する空間すべてを包み込む、メロウに色づくガラスのうつわ
富山県にて吹きガラスを制作されている菊地大護さん。
菊地さんがガラス作家を目指されたのは、なんと中学生の頃。
偶然目にしたガラス職人の圧倒的なカッコよさと薄暗い空間で光るガラスの美しさに一瞬で魅了されたとおっしゃいます。
その夢を叶うべく、高校卒業後は、富山ガラス造形研究所 造形科にて学ばれ、その後、ガラス作家ピーター・アイビー氏の工房で4年間の勤務。現在は富山ガラス工房に所属しながら活動されています。
菊地さんの作品の魅力。
それは、「空気」を感じることができる造形美。
それらが存在する空間までをもすべてをふわっと包み込むような、柔らかくも凛とした佇まい。
全体的に丸みのあるシルエットの作品の数々は、「ガラスの中の空間」を感じてほしいため。
ガラス自体の素材の美しさをいかしたものをつくりたいという想いであえて装飾を加えず、極限まで薄くつけ、薄く吹いたガラスの成形という難しい工程を経て、シンプルに仕上げられています。
「食材や花を盛り付けるうつわなだけでなく、生活空間も盛り付けることのできる。
そんな、生活雑貨と美術の中間を目指して制作しています。」とおっしゃる菊地さん。
空間の中で、引き立てあえるものであるよう、ガラス越しに見える景色や空間も一緒に作っていけたらとたどりついた、淡く着色されたガラスは、ピンクにもベージュにも紫のようにも見える、柔らかで温かいメロウなカラー。
ほんのりと色づいたガラスは、空間にすっと馴染んでいき、その場に彩を与えてくれます。
「綺麗なガラスとは何かと考えたとき、泡がなく、汚れもない透明なものではなく、むしろ、不完全なものほど人の手の加えられた形跡があり、人間味があり、美しいと感じるのではないかと考えた」とおっしゃる菊地さん。
そんな菊地さんがつくられる凛とした表情と、柔らかでぬくもりが残る優しいヴェールのような表情を合わせ持つ作品の数々を是非お愉しみいただけたらと思います。