中川紀夫(紀窯)
イギリスの伝統的なスリップウェアの雰囲気を受け継ぐ、素朴でおおらかな存在感を放つうつわ
400年余の歴史を誇る陶磁器の里、長崎県波佐見町の中尾山。その地で生まれ育った中川紀夫さん。
波佐見町には現在も50を超える窯元が存在し、中川さん自身のご実家も「孔明窯」という窯元でいらっしゃいます。
ものづくりを志し、秋田公立美術工芸短期大学に進学。卒業後は、益子の窯元「大誠窯」で8年間学ばれます。
益子での修行中、東京で行われていた展覧会で、スリップウェアに出会ったという中川さん。
そこに描かれた、まるで生きているような気配さえある線に、「未知の世界を知った感じ」と思うほどの衝撃を受けたとおっしゃいます。
2009年長崎県波佐見町中尾山に帰郷。
生まれ育った場所で、自然の素材にこだわり、釉薬、土の配合など、一から全て行い、スリップウェアを中心としたうつわを作陶するため、「紀窯」を構えられます。
日本民藝のイメージが色濃いスリップウェアですが、歴史はとても古く、食器としては、17〜18世紀にイギリスで、庶民が調理用に使うパイ皿としてのスリップウェアが盛んに作陶されるようになります。
しかし、スリップウェアはイギリスをはじめとしたヨーロッパではほとんど評価されることなく、やがて19世紀頃には衰退。
その後、柳宗悦氏、濱田庄司氏、河井寛次郎氏、バーナード・リーチ氏をはじめとする日本の民藝運動の創始者たちがその美を見出し、世界で初めてスリップウェアを評価、価値を伝えはじめます。
現在の日本の食卓で人気のスリップウェアは、一旦は衰退したものの、長い年月と海を越えて、イギリスから日本へ受け継がれたという歴史はとても興味深く、ますますスリップウェアに魅力を感じずにはいられません。
中川さんがうつわに描く、格子やボワーズヘッド文様などの数々。
これらは、古陶スリップウェアにも見られるスリップウェアの王道の様な柄でもあり、中川さんがつくるスリップウェアは、元々日常使いとして作られていた古陶スリップウェアと同じく、素朴でおおらかな存在感を放ちます。
「量産品ではなく、手作りの良さもありながら、それでいて芸術品でもない、そういうバランスを目指しています。」とおっしゃる中川さん。
中川さんのうつわを手にすると、その存在感は一見芸術品のような要素もありながらも、いい意味で力が入りすぎていないラフな無骨なカッコよさが感じられ、またそこに経年変化も加わることで魅力を増す、まさに用の美を感じます。
丈夫で、気負いなく、普段の食卓に使いやすいところが、古陶スリップウェアの雰囲気と日本の陶芸技術を合わせ持つ、中川さんのスリップウェアの最大の魅力なのです。
柄がありながらも、料理をのせてもうるさく感じない。
むしろ、野菜やフルーツといった、素材自体の色が美しく映える、不思議な魅力のうつわ、スリップウェア。
色々と並べて、組み合わせて。
食卓に彩りを運び、時を共に紡ぎながら、お使いいただけたらと思います。
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