田中祐士 ・田中麻由(木工舎 hitotoki)
人と木が寄り添い生まれる、それぞれの休(いこ)いの空間
海と山に面した自然豊かな三重県松阪市に工房を構える、田中祐士・田中麻由さんご夫婦。
ご主人の祐士さんが主に制作を担当し、奥様の麻由さんが制作補助をしながら、夫婦二人三脚で日々制作されていらっしゃいます。
おふたりが作品づくりに主に使用しているのは、名前もあまり知られることが少ない、「雑木」と称される木々。
元々違う職種に就かれていた田中さんご夫婦が、木々と共に歩むきっかけとなったのも、その雑木との出会いがあったから。
何十年と何百年と生きてきた木の力強さや、美しさは、一つとして同じものがありません。
それぞれに、異なる色目や、木目、節があり、時には欠けや、虫食いの跡があったりも。
「雑というと、ネガティブな意味合いが浮かびがちですが、色々なものが混じり合うという意味合いも持ち、その多様に富んだ木々の魅力というものに、どんどんのめり込んでしまったんです。」とおっしゃいます。
その一方、出会いの中で、雑木の現状も目の当たりにします。
街路樹、庭木、果樹、間伐材など、伐採後は、家具や建築などには不向きなことから、チップやパルプといったその形を有さない方法での活用が主流となっており、場合によっては、経済的な価値の低さから、伐採後に放置されることも。
「こんな個性的で、面白くて、いい木なのに、もったいない。」
豊かな表情と美しさを持つ雑木を、形あるものとして、人の手に繋ぐ。
おじい様から受け継いだ作業場で、好きだったものづくりをずっと趣味で続けていけたらいいなと思っていた祐士さんは、大きくシフトチェンジし、同じ想いを持った、地元の林業や製材業の方たちの協力を得ながら、できる限り地域の木々を活用した作品作りをし、雑木を広めていくことを志すようになります。
木工作家を生業とし、自分たちの進むべき道と決意した時、「自分たちが作りたいものを作るというよりも、雑木を人々の暮らしにどう取り入れてもらい、寄り添わしていけるかということ。」が活動の主題となったとおっしゃいます。
屋号である、「hitotoki」には、「人と木が寄り添い、休(いこ)いが生まれる。」という、木工作家としての制作活動のテーマが込められています。
木工舎 hitotokiの代表的作品ともいえる「森の灯」と名付けられた小さなスタンドライトや、ペンダントライトなどのランプ、うつわにカトラリーといったテーブルウェア。
雑木を用い、おふたりが手仕事で丁寧に削り仕上げ、出来上がったランプの灯は、唯一無二の灯となり、たどり着いたそれぞれの場所を、木々の間から差す木漏れ日のように、ふんわりと包み込みます。
用途とフォルムのバランスにこだわり、納得がいくまで作り込んだテーブルウェアは、暮らしの中の相棒のような道具のひとつとなって、生活に溶け込んでいきます。
「木を植え育て伐る人も、製材する人も、加工する人も、そしてそれを迎え入れてくれる方々も。
みんなが木を取り囲んで笑っていられる世界線が描けたら。」そうおっしゃるおふたり。
長い年月をかけ、森で育まれ、紡いできた物語が、木工舎 hitotokiの作品となって生まれ変わり、新たな場所で物語を紡いでいく。
心が落ち着き、満たされる、そんな空間。
人と木が寄り添う、小さいけれど、自分だけのとびきりお気に入りの休いの空間が、笑顔溢れますように。
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