洗練された造形に、温かみを纏うスープカップ
まん丸の広い口径に
やや浅めの、平らなデザインのスープカップ。
横からみたフォルムも美しく、小さめについた取っ手が可愛い。
薄く丁寧に削られた縁は、繊細でありながら、滑らかなカーブの仕上げで、優しい印象。
それらは使いやすさにもつながっています。
信楽の土ならではの素地の緋色が纏った、優しくて落ち着きのある色味の釉薬。
洗練された造形美でありながら、全体の雰囲気は、ふわっと柔らかく、可愛らしい。
まるで焼き菓子のような。
田川さんの作品は、その釉薬の表情がとても印象的です。
釉薬がうつわの上でみせる結晶と貫入。
うっすらとのぞく緋色とキラキラと輝く釉薬の表情は、自然の景色にも似たものを感じます。
紺は月の表面のような。
緋色と合わさると緑にもみえます。
とても趣深い表情。
緋色が強くでたもの、釉薬の色ムラ、所々にピンホール、鉄粉も見られますが、うつわがみせる全ての表情が豊かで、それらからは、土ものならではの温かみを感じることができます。
美しい底の緋色のグラデーション
こちらも是非愉しんでいただきたいポイントです。
広めにつくられた口径は、注ぐ際にこぼれにくいのが嬉しい。
また注いだスープの表面に広がりがあることで、美しくみせてくれるように感じます。
ボウルとして使って、グラノーラや、ヨーグルトに。
また副菜などのお料理を盛り付けるのにもお使いいただけます。
五寸皿をソーサーとして組み合わせても。
同じ釉薬同士、他の釉薬の色目と合わせても可愛い。
田川さんの洗練された造形センスと土との対話から生まれた温かみが残る雰囲気のバランスが、とても心地の良いうつわたち。
「焼き上がり後が楽しみで、窯の蓋を開けた瞬間の、やっと出会えた瞬間がすごく好き」
そうおっしゃる田川さんのその言葉に、土を愛し、作品に真摯に向き合う想いが伝わってきます。
マットな表情は、使い続けていくと油や水が馴染んでいき、色味によって変化や模様が生まれていきます。
白や薄青のうつわは、しっとりとベージュ感が増していったり。
紺やグレーのうつわは、重厚感が増すような風合いに変化します。
そんな変化も愛おしい。
私たちの暮らしと共に歩んでくれるうつわです。
【ピンホールや釉薬のはじけについて】
どの色味の釉薬にも、ピンホールと呼ばれる小さな穴や、釉薬のはじけた後が所々にみられます。
うつわの表情として、楽しんでいただけましたら幸いです。
【紺の釉薬について】
紺の釉薬の器について田川さんからお伝えごとです。
紺の釉薬には酸化銅(大まかに言うと10円玉が黒ずんだ時の黒い成分)を多めに調合しているので酸に反応しやすい釉薬になっております。
お酢やレモンに触れると白いシミができることがありますので器を使い始める時は避けて下さい。
器の経年変化が進み、艶が増してきましたらお酢など使っていただいて大丈夫です。
艶を早めに出したい、お酢など気にせずがしがし使いたい場合はオイルコーティングをするのが一番手取り早い方法です。
目止めをし、乾燥した後に香りの少ない油(うちではサラダ油が多いです)をキッチンペーパーに染み込ませ器に塗布してください。
5-10分ほど放置し油を器に染み込ませてからスポンジに洗剤をつけてしっかりと洗って完了となります。
注意点が多く申し訳ありませんが、器を育てるような感覚で使っていただけたらとても嬉しいです。