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田中大輝・田辺桂（TATA pottery studio）

用の美に色彩豊かな物語が宿るうつわ

うつわの形作りを担うのは、京都府右京区京北に拠点を構える「タナカ製陶」の代表 田中大輝さん。
2012年に京都精華大学 芸術学部 素材表現学科 陶芸コース卒業後、陶芸家 村田森氏に師事。2015年に独立、「タナカ製陶」として活動を始められます。

「用の美」＝大正から昭和の前半にかけての民藝運動が盛んな時代、生涯をかけて使いやすさを求め作り続け、それそのものに美が宿るという考えに強く惹かれ、人や食と関わり、いろんな使い手の思いを形に想像し、うつわを作り続けていきたいという思いが湧いてきたとおっしゃる田中さん。使い手が求めるものを作ることと自分の考える美を求めること、これら外向きと内向きの二面性が陶芸家にとってのものづくりの主軸だと考え、「自己表現の世界で自分の作りたいものを作るのではなく、自分以外の人が使うのだからその人のことを考えて作る。ありきたりですし、当たり前のことですが、やきものの世界ではそれを誠実にこなしていくことが大事なことだと思います。」とおっしゃいます。

うつわに絵付けを施すのは、「考える筆」田辺桂さん。
2012年に京都精華大学 芸術学部 素材表現学科 陶芸コース卒業。大学には絵付けの授業がなかったこと、また染付のうつわが好きだったのもあり、絵付けのことをしっかりと勉強してみたいと思い、京都府立陶工専門校図案課にて2年間学ばれます。卒業後は、現在も在籍する京焼の老舗窯元で絵付け師として従事。

限られた時間の中で、真っ白なうつわに植物や動物をどう配置すると美しいかを考え描くことは、色々な雑念がなくなり、無心になれるので好きなところなのだけれども、焼き上がりを見て無心になりすぎるのも良くないないと思うことも多いそう。
「いつも焼く前と焼き上がりで毎回発見と反省点が出てくるのが陶芸が好きなところで、出来上がった作品をお客さんに気に入ってもらえるのは素直に嬉しいです。」とおっしゃいます。

大学の同級生であるふたり。
ある年の忘年会、ふとしたきっかけで田中さんのうつわに田辺さんが絵付けをします。
出来上がった作品に「自分が作るのは使い勝手の良いシンプルなうつわで、田辺の絵が入ることで完成度が高くなり、また新しい可能性が見えた」と田中さんはおっしゃいます。
それは、「シンプルなうつわが好きな人もいれば、かわいいネコのうつわが好きな人もいる。できるだけたくさんの人たちに良いうつわを届けていきたい。」という田中さんの兼ねてからの想いが繋がった瞬間でもありました。

田中さんの用の美に添ったうつわに田辺さんの絵がのることで広がった世界。
ふたりはタッグを組み、活動を始められます。
コラボ制作の場、TATA pottery studioは、田中さんにとって、民藝マインドの軸の中で、色々な使い手が求めるものを作りたいという想いが繋がる場であり、桂さんにとって、窯元で描くものとはまた違った、細やかで色彩豊かな絵を描ける、新たな表現で使い手に喜んでもらえる活動の場。
それぞれが素地と絵でやりたいことを作品に向け、試行錯誤しながらも、共通するうつわを手にする使い手への想いを合わせて、ひとつひとつ仕上げられていきます。

TATA pottery studioさんのうつわは、その造形デザインと絵付けのモチーフ、色合いのバランスが、上品でいて、どこかレトロで可愛らしいものばかり。
それらは、わたしたち誰しもの心の奥底に眠る昔の記憶を思い起こさせてくれるようで、一瞬で懐かしくて温かい、優しい世界に連れて行ってくれます。

目にするたびに癒される、うつわの中で繰り広げられる物語。
愛しい時間をふわっと食卓に運んできてくれるそんなうつわたちを是非お愉しみいただけたらと思います。

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